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四半期レビューが半期レビューになるってことですか?
最終更新日:2022年05月30日

四半期報告書がなくなり短信に一本化するというお話があります。そこで先日、四半期報告書がなくなるということは少し考えづらい…というお話をいたしました。

四半期報告書がなくなる?

2022年5月23日のディスクロージャーワーキング・グループ第9回の議事の配布資料に、四半期報告書と四半期決算短信の一本化についての案がまとまっていました。(今日現在、議事録はまだアップされていません。)

金融審議会ディスクロージャーワーキング・グループ報告(案)

どうも、四半期決算短信の開示内容を充実させて、四半期報告書については、第2四半期に半期報告書みたいなものを提出するとして、第1、第3四半期の四半期報告書はなくなる方向のようです。

今後の検討事項としては、

  • □簡素化してきた四半期決算短信の内容に四半期報告書の開示内容をどう盛り込んでいくか?
  • □四半期決算短信の開示内容について虚偽が発生した時の取扱いはどうするのか(現状、四半期決算短信については、四半期報告書のような法的な罰則規定がない。)?
  • □四半期決算短信に監査人のレビューを必要とするか?
  • □半期報告書には、監査の水準を求めるか?それともレビューの水準のままでいくか?

ということのようです。

四半期開示については、証券取引所に四半期決算短信を提出する制度と、財務局に四半期報告書を提出する制度があります。

四半期決算短信については、取引所のルールに則って、なるべく早く決算数値を公開することが求められていて、監査法人(又は公認会計士)のレビューは要りません。四半期報告書については、粉飾決算を防いだり、適切な決算数値を開示することが求められているので、金融商品取引法に基づいて、監査法人のレビューを受ける必要があります。

取引所には、上場会社になるべく早く短信を提出してもらって市場を活性化させたい、という希望があるものの、会社としては、四半期報告書に四半期レビューを受ける制度があるので、数字が固まるのを待ってから短信を提出したい…という希望があり、取引所が当初想定していたような早いタイミングで短信が提出されていないことが問題となっていました。

会社の中には、普段の会計処理についてはほぼ完ぺきで、四半期決算の会計処理も固まっていて、レビューをしていても修正がほとんどなく、難しい会計処理や開示内容はレビューに入る前に論点を潰し終わっていて、月内に短信を出すのはできるくらいの実力を持っている会社があります。

決算が早い会社では、2週目には連結が終わっていて、2週目の終わりか3週目には開示ができるようなイメージがあります。

ただ、短信に貸借対照表や損益計算書を載せる以上、監査法人の四半期レビューを受けて数字が確実に固まった時点で開示したい、ということから、監査法人の四半期レビューのスケジュールを確保しないといけないことがボトルネックになっている部分もあるのかもしれません。

例えば、早い会社でも、2週目くらいから監査法人の四半期レビューが始まり、監査法人も監査調書を作ったり法人内での審査等が必要になるので、それなりのレビュー期間が必要で、やっと3週目の終わり位に大体間違えないくらいの数字が出て、4週目に短信提出…というようなスケジュールかと思います。

そんなわけで、監査法人のレビューがなければ確かに開示が早まるかもしれません。

もしもそのような制度になり、レビューが必要ないとすると、監査法人は第1・3四半期、どう対応することとなるのでしょうか?

四半期決算が導入される前は、往査の内容がクライアントによって様々で、第1四半期と第3四半期は、どちらかというと半期と年度の監査がスムーズになるように実証手続を前もってやっておいたり、論点を潰すような手続が多かったように思えます。

会社によっては、第1四半期と第3四半期の往査はいらない、という会社もあり、監査法人とクライアントとの間の関係やクライアントの決算体制によって往査のレベルが違っていた印象もあります。

もしも、第1四半期と第3四半期のレビューがいらなくなれば、決算体制がかなりしっかりしている会社は、監査法人の関与を全く必要としないかもしれません。監査法人としても四半期決算導入以前に戻って、四半期決算から2~3か月たったところで、論点を潰しに行ったり年度の監査手続の作業をやりに行ったり…という流れになるのかもしれません。

ただ、以前と比べて大きく違っているところがあります。

ここ数年でリモートワークがかなり進みました。四半期決算導入前は、監査法人も紙の監査調書を作っていたのが主流だったと思いますが、ここ数年で、一気にIT化が進みました。クライアントから必要な会計データが送られてきて、監査チーム内の往査チームと在宅チームで、どこからどこまでのデータを誰が見る、誰が書類を取り寄せる、誰が誰にヒアリングをする、ということをスムーズにできるようになりました。

そうすると、レビューがいらなくなっても、主にデータ間の不整合がないかどうか見てほしいとか、会計処理が難しいものは契約書等をpdfで送るので会計処理にどう落とし込むのかアドバイスが欲しい、というクライアント側のニーズは残ると思います。

それはリモートでスムーズにできるということは分かってきましたので、クライアント・監査法人間、そして、監査法人内であまりコストをかけず、しかも早くできることになります。

監査法人では、四半期レビュー報告書を出すものでもないので、社内の審査等の手続がいらなくなるので、監査チーム内の判断で、決算数値があまり問題がなさそうであることを会社に伝えて、会社は今までよりも早く短信を提出する…という流れになるのではないでしょうか。

レビューが無い中でどの程度の手続を監査法人に依頼するかは、短信の開示事項によると思います。

短信の開示で会社側がナーバスになる部分は、貸借対照表と損益計算書を開示しないといけない点にあると思います。

もしも、貸借対照表と損益計算書を今の四半期報告書よりももっと簡素化して開示できるのであれば、監査法人に対するニーズはかなり低いものになると思います。

監査をしている側としては、第1・3四半期もレビューと似たような手続をさせてもらえた方が第2四半期と年度の監査(又はレビュー)がスムーズになると思いますので、できれば、今まで通りのコミュニケーションが取れればいいと思います。

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