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学校法人監査の監査報告書の「その他の記載内容」の取り扱い
最終更新日:2022年05月24日

今年もまた学校法人監査の季節になりました。1年経つのは早いものです。

毎年、学校法人の監査に入る前に、日本公認会計士協会の学校法人監査関係のオンライン研修を受けています。

基本的に、会計基準や監査基準は、上場会社の会計や監査に向けて改正されることが多いです。

上場会社の会計監査をしていると、会計基準や監査基準の改正があれば、それまでの改正の経緯に照らして、どの部分が影響を受けそうかという点が明らかなことが多い印象があります。(改正点を理解していても実務に落とし込むときに、どうすればいいか分からない時が特に最近、結構ありますけれども。)

一方で、学校法人については、特有の会計処理があったり、学校運営が上場会社の運営とは大きく違っている部分があり、かなり独特なものがあります。そのため、会計基準や監査基準に改正があっても、すぐに学校法人会計・監査として飲み込めるものではなく、毎年、オンライン研修を受けながら、「あー。確かに、この基準、当てはめづらいよねー。」と思いながら聞いています。

今年は、監査報告書に「その他の記載内容」が追加されることとなりました。学校法人監査での取り扱いがまた独特でした。

その他の記載内容とは

会計監査では、どこからどこまでを監査をしたのか明らかでないと、会計監査人の責任の範囲が不明確になってしまうので、監査の対象となる書類の範囲を明確にします。

法定監査であれば、法律にどの書類を会計監査の対象とするのかが明確にされているため、そこに規定されている書類を監査します。

例えば、上場会社は金融商品取引法に基づいて有価証券報告書を提出しますが、金融商品取引法第193条の2第1項に記載されている書類に公認会計士又は監査法人の監査証明を受けなければならない、とあります。

有価証券報告書には、大きく分けて、経理の状況とそれ以外の部分があります。監査報告書の対象となっているのは、経理の状況の部分です。

経理の状況以外の部分については、監査の対象とはなっていないのですが、会社の状況を説明する上で、経理の状況の内容を数字を用いて説明したり、監査人が監査をしていく過程で把握した定性的な情報が記載されていたりします。

そこで、監査の対象ではない部分に、監査の対象の部分と大きく違うことが書かれていたら読み手としては混乱してしまうので、監査の対象ではない部分もある程度の監査手続をしてくださいね、ということが監査基準委員会報告書720『その他の記載内容に関連する監査人の責任』に書いてあります。

2021年に、監基報720が改正されました。

従来は、財務諸表とその他の記載内容との間に重要な相違がある場合には、監査報告書の追記事項に記載していました。

今般の改正では、2022年3月31日以後終了する事業年度に係る監査から、重要な相違がない場合にも、監査報告書に「その他の記載内容」という区分を設け、第21項の内容を記載するようになります。

学校法人監査でのその他の記載内容の取扱い

学校法人監査でも、今回の監査から、監査報告書に「その他の記載内容」の区分が加わります。

知事所轄法人の監査の場合には、所轄庁の通知によって、所轄庁に提出される計算書類として一式で編綴される書類の中に、監査対象となる、計算書類、すなわち資金収支計算書(人件費支出内訳表を含む。)、事業活動収支計算書、貸借対照表(固定資産明細表、借入金明細表及び基本金明細表を含む。)、重要な会計方針及びその他の注記、以外のものが無いことが多いと思います。

このような場合には「その他の記載内容」は無い、という取扱いになるようです。

また、計算書類の中には予算数値を書く部分はありますが、予算書自体が編綴されるわけではないので、その他の記載内容として取り扱うのではなく、予算書からの転記を確認する監査手続を行うので、この部分は監査対象に含めるという考え方のようです。

監基報720には、その他の記載内容が存在しない場合の監査報告書の文例が載っています。

  • その他の記載内容
  •   その他の記載内容は、監査した財務諸表を含む開示書類に含まれる情報のうち、財務諸表及びその監査報告書以外の情報である。
  •   当監査法人は、その他の記載内容が存在しないと判断したため、その他の記載内容に対するいかなる作業も実施していない。

研修では、こちらの文例をベースにして、知事所轄法人の監査の場合の講師案の監査報告書の文例が載っていました。

勉強になりました。

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