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インボイス制度初年度の課税期間の取扱いについて
最終更新日:2021年12月15日

2023年10月1日からインボイス制度が始まりますが、今回は、2023年の課税期間の取扱いについてのお話をしようと思います。法人は決算日により取扱いが異なる部分があるので、今回は簡便的に、個人事業主で2022年以前から事業を行っている場合で、免税事業者が2023年10月1日から適格請求書発行事業者となった場合を想定してお話したいと思います。

課税期間と登録日の関係

免税事業者が2023年10月1日から適格請求書発行事業者となると、2023年10月1日から2023年12月31日までの期間について、消費税の申告が必要になります。この場合、2023年の課税期間の取扱いはどのようになるのでしょうか。

まず、10月1日~12月31の期間について、消費税法上はどのように取り扱っているのか見ていこうと思います。

法第9条 小規模事業者に係る納税義務の免除

  • 1  事業者のうち、その課税期間に係る基準期間における課税売上高が1,000万円以下である者については、…その課税期間中に国内において行った課税資産の譲渡等及び特定課税仕入れにつき、消費税を納める義務を免除する。…

平成28年改正法附則第44条

  • 4 新消費税法第57条の2第2項の申請書を提出した事業者…の当該課税期間…のうち当該登録開始日から当該課税期間の末日までの間における課税資産の譲渡等及び特定課税仕入れについては、消費税法第9条第1項本文の規定は適用しない。

つまり、登録日が2023年10月1日の場合、2023年の課税期間は1月1日~12月31日(法第19条第1項第1号)で、登録日10月1月~課税期間の末日12月31日は小規模事業者に係る納税義務の免除がないため消費税を納める義務を負う、ということになります。つまり、課税期間と課税事業者となる期間が異なることになります。

2年後の基準期間における課税売上高の算定

2025年1月1日~12月31日の課税期間の基準期間はどのようになるのでしょうか。

法第2条第1項第14項

  •  基準期間 個人事業者についてはその年の前々年をいい、法人についてはその事業年度の前々事業年度(当該前々事業年度が1年未満である法人については、その事業年度開始の日の2年前の日の前日から同日以後1年を経過する日までの間に開始した各事業年度を合わせた期間)をいう。

「個人事業者についてはその年の前々年」ということは2023年1月1日~12月31日ということになります。

2023年は、免税事業者の期間が1月1日~9月30日、課税事業者の期間が10月1日~12月31日です。

そこで、免税事業者の期間の課税売上高は、課税資産の譲渡等に伴って収受し、又は収受すべき金銭等の全額(基本通達1-4-5)、つまり、売上等の総額となります。

課税事業者の期間の課税売上高は、課税資産の譲渡等に伴って収受し、又は収受すべき金額等の合計額に100/110(又は100/108)を乗じた額となります。つまり、売上等の税抜金額となります。

登録日から簡易課税制度を選択する場合

簡易課税制度を選択する場合、原則的な取扱いは、簡易課税制度の適用を受けようとする課税期間の初日の前日までに提出する必要がありますが(法第37条)、経過措置として、2023年10月1日の属する課税期間中に適格請求書発行事業者の登録を受ける場合には、2023年12月31日までに簡易課税制度選択届出書を提出すると、2023年10月1日から簡易課税制度の適用を受けられます。

税務通信No3675 (2021年10月18日)に簡易課税制度選択届出書の「適用開始課税期間」の書き方が取り上げられていました。免税事業者が2023年10月1日から適格請求書発行事業者となる場合で、2023年10月1日から簡易課税制度の適用を受けるときには、簡易課税制度選択届出書の適用開始課税期間の始まりの期間は「自 令和5年1月1日」となります。

これは、前述のとおり、登録日が2023年10月1日でも、課税期間が2023年1月1日~2023年12月31日となるためです。

簡易課税制度の拘束期間

簡易課税制度を選択した場合、原則として2年間は本則課税にすることができません。

法第37条 中小事業者の仕入れに係る消費税額の控除の特例 ([ ]は筆者加筆。書き方は若干雑です。以下同じ。)

  • 1 事業者…が…その基準期間における課税売上高…が、5,000万円以下である課税期間…について…[簡易課税制度適用届出書]を提出した場合には、当該届出書を提出した日の属する課税期間の翌課税期間…以後の課税期間…については、[基準期間における課税売上高が5,000万円を超えなければ、簡易課税制度が適用される。]
  • 5 …[簡易課税制度選択届出書]を提出した事業者は、同項の規定の適用を受けることをやめようとするとき、又は事業を廃止したときは、…[簡易課税制度不適用届出書を]提出しなければならない。
  • 6 前項の場合において、…第1項の規定による届出書を提出した事業者は、事業を廃止した場合を除き、同項に規定する翌課税期間の初日から2年を経過する日の属する課税期間の初日以後でなければ、同項の規定の適用を受けることをやめようとする旨の届出書を提出することができない。
  • 7 第5項の規定による届出書の提出があつたときは、その提出があつた日の属する課税期間の末日の翌日以後は、第1項の規定による届出は、その効力を失う。

平成30年改正令附則第18条

  •  …[インボイス制度に乗って2023年10月1日から課税事業者となる]事業者が、…[簡易課税制度選択届出書]を…[2023年中]に…提出した場合において、当該届出書に当該届出書を提出した日の属する課税期間について同項の規定の適用を受ける旨を記載したときは、当該課税期間の初日の前日に当該届出書を…提出したものとみなして、同項の適用を適用する。

2023年10月1日~12月31日の消費税計算に簡易課税を選択しようとして簡易課税制度選択届出書を提出したのが2023年とすると、その課税期間の初日(2023年1月1日)の前日(2022年12月31日)に提出したとみなされ、その日の属する課税期間(2022年)の翌課税期間(2023年1月1日~12月31日)の初日(2023年1月1日)から2年を経過する日(2024年12月31日)の属する課税期間の初日(2024年1月1日)以降に簡易課税制度不適用届出書を提出でき、その日の属する課税期間の末日(2024年12月31日)の翌日(2025年1月1日)以降は、簡易課税ではなくなる、ということになります。

つまり、現在の法令を読むと、2023年にインボイス制度に乗って簡易課税制度を選択した場合、2024年に不適用届出書を提出し忘れなければ、最短で2025年から本則課税とすることができるものと考えられます。

2023年10月1日~12月31日 簡易課税

2024年1月1日~2024年12月31日 簡易課税(この年に簡易課税制度選択不適用届出書提出)

2025年1月1日~ 本則課税

簡易課税制度を選択すると税額計算がしやすいというメリットはありますが、選択した後に本則課税としておけば還付を受けられていたことに気づく事業者も出てくるような気もしています。

課税事業者選択の拘束期間

免税事業者が課税事業者を選択した場合にも原則として2年間の拘束期間があり、その間は免税事業者に戻ることができません。

法第9条 小規模事業者に係る納税義務の免除

  • 4 …[免税事業者]が、その基準期間における課税売上高…が1,000万円以下である課税期間につき、[課税事業者選択届出書]…を提出した場合には、当該提出をした事業者が当該提出をした日の属する課税期間の翌課税期間…以後の課税期間…中に国内において行う課税資産の譲渡等及び特定仕入れについては、…[消費税を納める義務を負う]。
  • 5 …[課税事業者選択届出書]を提出した事業者は…[課税事業者の選択]の規定の適用を受けることをやめようとするとき、又は事業を廃止したときは、… [課税事業者選択不適用届出書]を…提出しなければならない。
  • 6 前項の場合において、… 第4項の規定による届出書を提出した事業者は、事業を廃止した場合を除き、同項に規定する翌課税期間の初日から2年を経過する日の属する課税期間の初日以後でなければ、…[課税事業者選択不適用届出書]を提出することができない。
  • 8 …[課税事業者選択不適用届出書]の提出があつたときは、その提出のあつた日の属する課税期間の末日の翌日以降は、[課税事業者選択届出書]…は、その効力を失う。

適格請求書発行事業者の申請日と登録日と課税事業者選択届出書を提出した日の属する事業年度の関係がよくわかりません。

平成30年改正令附則第13条には、事業者が、原則として2023年3月31日にまでに適格請求書発行事業者の登録を行うと、登録日は2023年10月1日となる旨が記載されています。

また、通達レベルではありますが、インボイス通達5-1から、2023年3月31日までは適格請求書発行事業者の登録申請書を提出すれば課税事業者選択届出書を提出しなくても課税事業者となることは分かります。

インボイス制度の登録申請日=課税事業者選択届出日として、例えば適格請求書発行事業者の登録申請書を2021年に提出している場合、法第9条第4項の「当該提出をした日の属する課税期間」がどの期間にあたるのかが条文上は読み取れないような気がします。

一つずつ条文を読んでいくと、インボイス制度に乗って課税事業者を選択した場合の拘束期間が、今のところ、私にはよくわかりませんが、通常の拘束期間と同様2年になるのではないかと思います。

もしもこの点、ご存知の方は izawa.inqury@gmail.comまでメールいただければ幸いです。

もしも拘束期間が出てくるということになると、この拘束期間中に調整対象固定資産をポロっと買った場合の論点に繋がりそうな気がしています。

【後日、回答がでました。】

【税務】免税事業者のインボイス登録の経過措置で縛りなし?

をご覧ください。

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