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配当金の源泉徴収が必要なくなるかもしれません
最終更新日:2021年12月14日

令和4年度税制改正大綱で、一定の内国法人からの配当の源泉徴収の見直しを令和5年度の税制改正の検討事項とする、というお話がありました。

  •  一定の内国法人が支払を受ける配当等で次の①②については、所得税を課さないこととし、その配当等に係る所得税の源泉徴収を行わないこととする。令和5年10月1日以後に支払を受けるべき配当等について適用する。
  • ①完全子法人株式等(株式等保有割合100%)に該当する株式等に係る配当等
  • ②配当等の支払に係る基準日において、当該内国法人が直接に保有する他の内国法人の株式等(当該内国法人が名義人として保有するものに限る。)の発行済株式等の総数等に占める割合が3分の1超である場合における当該他の内国法人の株式等に係る配当等

グループ管理の一環で、親会社が、子会社の稼いだ資金を、子会社に溜めずに配当金や借入金として吸い上げる仕組みがあることがあります。子会社の業績が良いと、子会社からの配当金の額がかなりのものになることがあり、四半期決算をやってみると、毎年確定申告でかなりの税額になる親会社で、多額の未収法人税等が計上されて、一瞬、アレッ!?となるくらいのインパクトがあるときがあります。

元々、源泉の考え方と受取配当等の益金不算入の考え方が違う流れで来ているところがあるので、ここで源泉徴収がいらなくなる、というのは面白いお話だと思いました。

この源泉の取扱い改正の発端は、令和元年度の会計検査院の決算検査報告p280~283のようです。

まず、源泉徴収制度は、所得税を効率的かつ確実に徴収するために設けられた制度です。配当を支払う法人が源泉徴収を行って納付し、配当を受け取る法人が負担した源泉税額は、法人税の前払的な性格を有するものとして確定申告等を通じて精算されます。

源泉徴収については、税率等の改正はあったものの、現行の所得税法が施行された昭和40年当時から変わらずに維持され、現在に至っているそうです。

その一方で、受取配当等の益金不算入制度は、様々な改正が重ねられ、完全子法人株式等(100%子会社)は100%益金不算入、関連法人株式等(30%超保有)は負債利子を控除した額が益金不算入となりました。

そのため、当期純利益に対して、100%子法人や関連法人等からの受取配当金の額が多額である場合、法人税額に対する所得税額控除が上回り還付が発生することがあります。

そして、国税が還付される場合には、還付されることとなった国税の法定納期限等の翌日から還付金の支払が決定された日までの期間の還付加算金が支払われることとなります。

決算検査報告によりますと、平成28年度以降の受取配当の額は大幅に増加し、所得税額控除のも3兆円から4兆円程度だったそうです。そして、受取配当等の額に対する受取配当金の益金不算入の額の割合は、平成28年度以降は約80%もの高水準で推移しているそうです。

調査の対象となった会社のうち、完全子法人株式等又は関連法人株式等を保有している法人が平成29年度から令和元年度でのべ1,667法人あり(所得税額控除の額のほとんどが受取配当等の額に対するもの)、これらの法人が受け取った完全子法人株式等及び関連法人株式等に係る配当等の額は3年合計4兆9067億円、当該配当等に対する所得税額控除の額は3年合計9934億円。うち1,262法人で所得税額控除を適用したことにより還付金が生じていていて、その額が3年合計3398億円となっていたそうです。

還付されるとはいえ、配当時に納税資金が必要になる点や、税務署で源泉所得税事務が必要になっている点、配当金の金額が増えていくと還付加算金が増えていく可能性があるという点からこのような方向になったようです。

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