会計・税務をあなたの手に。
izawa-tax.com

インボイス発行事業者をもうやめたい
最終更新日:2024年04月11日

去年まではインボイス発行事業者になるための手続についてのお話が多かったと思います。

今年は、おそらく、いかにしてインボイス発行事業者をやめるか、というお話が出てくるのではないでしょうかねぇ…。

少なくとも2年間は課税事業者の罠

インボイス制度が始まる前は、免税事業者が課税事業者になりたい場合、課税事業者選択届出書を提出していました。課税事業者選択届出書を提出すると、少なくとも2年間は課税事業者となります(消費税法第9条6項)。

ここで、免税事業者が経過措置(課税事業者選択届出書を提出せずに、適格請求書発行事業者の登録申請書のみの提出)により課税事業者になった場合、いつでも免税事業者に戻れるのでしょうか?

結論としては、インボイス発行事業者の登録開始日が令和6年以降である場合には、少なくとも2年間は課税事業者となります(消費税法28年附則第44条5項)。

※登録開始日が令和5年の場合には最短で令和6年、今から戻ろうとすると、最短で令和7年から免税事業者に戻れます。

ここでいう、「2年」の考え方ですが、正確には次のとおりです。

  •  インボイス発行事業者の登録開始日の属する課税期間の翌課税期間から登録開始日以後二年を経過する日の属する課税期間までの各課税期間は免税事業者になることはできません。

つまり、個人事業者の課税期間を考えると、課税期間は、原則として、1月1日~12月31日のため、登録開始日が令和6年3月だったとすると、登録開始日以後2年を経過する日の属する課税期間は、令和8年ということになります。

つまり、令和6年3月~令和8年12月の2年10ヵ月は、課税事業者でなければなりません。

免税事業者への戻り方

経過措置により免税事業者が課税事業者になった場合には、『適格請求書発行事業者の登録の取消しを求める旨の届出書』を提出すると、インボイス番号が廃止され、登録の効力を失わせる、つまり、免税事業者に戻れます。

登録の時には、登録希望日を自分で選ぶことができました。

その一方で、登録の取消しについては、原則として、登録取消届出書の提出があった日の属する課税期間の翌課税期間の初日に登録の効力が失われます(消費税法第57条の2第10項)。

つまり、個人事業者の課税期間は原則として1月1日~12月31日のため、令和6年に登録をした個人事業者が令和9年から免税事業者に戻りたい場合には、登録取消届出書を令和8年12月17日までに提出する必要があります

同様に、令和5年にインボイス発行事業者の登録をして課税事業者になった免税事業者は、経過措置により2年縛りはないものの、今から登録を取り消そうとすると、令和6年12月17日までに登録取消届出書を提出して、令和7年1月1日から免税事業者になります。

課税事業者がインボイス登録をした時、2年縛りはあるか

毎年の売上が1千万円前後で、課税と免税の免税点を行き来している事業者もいます。

例えば、令和5年は免税、令和6年は課税、令和7年は免税といった場合に、令和5年はインボイス登録をせずに、課税事業者になった令和6年にインボイス登録をするケースがあります。このような場合には、2年縛りが適用されるのでしょうか?

結論としては、課税事業者がインボイス登録をした場合には、最短で翌年に免税事業者に戻ることができます(2年縛りを受けない)。

なぜならば、経過措置の適用(免税事業者がインボイス登録により課税事業者になる措置)の対象ではないから。

つまり、令和6年にインボイス登録をしても、令和6年12月17日までに登録取消届出書を提出していれば、令和7年から免税事業者に戻れます。

課税事業者選択届出書を提出した方が、縛りが短い罠

インボイス制度開始前は、免税事業者が課税事業者になる場合には、課税事業者選択届出書を提出する必要がありました。

課税事業者選択届出書を提出した場合にも2年縛りがありますが、インボイスの経過措置を使って登録した場合と2年縛りの内容が異なる点に留意が必要です。

課税事業者選択届出書を提出した個人事業者が不適用届出書を提出する場合、

  •  課税事業者選択不適用届出書を提出する場合には、課税事業者となった課税期間の初日から2年を経過する日の属する課税期間の初日以降でなければ、不適用届出書を提出することができない。届出書の提出があったときには、その提出があった日の属する課税期間の末日の翌日以降は免税事業者に戻ります(消費税法第9条4項~6項、8項)。

つまり、令和5年に課税事業者選択届出書を提出して令和6年から課税事業者となった場合には、令和7年1月1日以降に不適用届出書を提出すると、令和8年から免税事業者に戻れます。課税事業者の期間は、令和6年1月1日~令和7年12月31日なので、2年間ということになります。

ここで、令和6年3月1日に開業した個人事業者のケースを考えてみます。

課税事業者選択届出書を提出して課税事業者になる場合には、原則として課税事業者になりたい課税期間の前の課税期間に届出書を提出する必要がありますが、新規事業の場合には、事業開始の課税期間に提出することで、その課税期間から課税事業者になることができます。

(課税事業者選択届出書を提出する場合の縛りの期間)

令和6年3月1日に課税事業者となり、令和7年中に不適用届出書(と登録取消届出書)を提出すると、令和8年から免税事業者に戻れますので、課税事業者の期間は、令和6年3月1日~令和7年12月31日(1年10か月)ということになります。

ただし、令和6年度に調整対象固定資産や高額特定資産を取得した場合には、3年縛りがかかるので、令和8年12月31日まで(2年10ヵ月)が、課税事業者となります。

(インボイス登録の経過措置を利用した場合の縛りの期間)

登録開始日を令和6年3月1日として課税事業者になり、令和8年12月17日までに登録取消届出書を提出して、令和9年から免税事業者に戻れますので、課税期事業者の期間は、令和6年3月1日~令和8年12月31日(2年10ヵ月)となります。

なお、インボイス登録の経過措置を利用した場合には、調整対象固定資産の3年縛りの規定は適用されません。

また、法人の場合には、縛りの期間はどちらの方法で課税事業者になっても同じです。

開業初年度に還付を受けたい個人事業者は要注意だと思います。

還付が調整対象固定資産の取得による場合には、初年度はどちらの方法で課税事業者になっても本則課税を適用して還付を受けます。問題となるのは、2年目・3年目です。課税事業者選択届出により課税事業者になった場合には、簡易課税が使えませんので、2年目・3年目も本則課税しかありません。一方、インボイス制度の経過措置により課税事業者になった場合、2年目・3年目は2割特例を使えます。2年目以降に事業が軌道に乗ってくるのであれば、経過措置の方が有利かもしれません。

一方で、固定資産の取得はないものの、スタートアップで赤字になる予定なので還付を受けたい場合はどうなのでしょうか。3年縛りを受けないと考えると、課税事業者選択届出書を提出して、1年目は本則課税、2年目は本則課税・簡易課税、3年目は免税事業者に戻る、という消費税計算になると思います。一方、経過措置の場合、1年目は本則課税、2年目・3年目は本則課税(又は簡易課税)か2割特例という計算方法になると思います。もしかしたら、課税事業者選択届出書を提出した方が有利なケースがあるかもしれません。

TOP